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実験動物用給水システムの品質保証
? Quality Assurance of Animal Watering Systems ?

By Eric K. Edstrom and Robert Curran


はじめに

実験動物に供給される水に汚染物が含まれることは実験動物の健康と福祉にとって深刻な脅威となるばかりでなく実験データの信頼性をも大きく脅かすことになる。著者らは水の浄化に用いられる種々の装置を評価し、水質を実験動物施設とユーザーのニーズに合致させるための戦略を示唆する。

水質は医学研究における重要な変数である。細菌数が多くなると動物に病気や死をもたらし、水の中の他の汚染物は不確定度を持ち込んでくる。最近行われたアルツハイマーのアミロイドβがコレステロールによって蓄積するウサギ・モデルの研究では、蒸留水を飲ませたウサギでは脳の中に形成されるアミロイド・プラークが水道水を飲ませたウサギよりも有意に少なかったが、これは実験変数としての水の重要性を示している。

良い水質を構成するものは何か?

The Guide for Care and Use of Laboratory Animals「動物実験指針」(Guide)は“通常、動物はその特別な要求に従って、飲料に適した汚染されていない飲水を飲むことができなければならない”と述べている。Guideは水処理がどんな試験が行われるかによっては必要になるかもしれないとも言っている。この忠告によって多くの異なる解釈がなされてきた。ヒトの飲用に適した水道水を供給するものから逆浸透(RO)および他の濾過や処理プロセスによる高純度の水を供給するなどの幅があった。Guideは“水質および飲用に適している水の定義は地方によって異なる(Homberger and others 1993)。pH、硬度、微生物汚染および化学的汚染の定期的なモニタリングは、水質が容認できることを確認するために必要かもしれない。とくに、特定の場所の水の通常成分が、得られる結果に影響する可能性をもつ試験に用いる場合には必要である。プロトコールが非常に純粋な水を求めているときには汚染を少なくするあるいは皆無にするために水を処理あるいは精製することができる。”とも述べている。

Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(国際実験動物管理公認協会) (AAALAC)の研究所査察の中で、査察官は通常、その研究施設が、行われている研究の性質および飼育している動物の健康と微生物学的状態の両方に適合する水質保証をどの程度まで行っているかを評価しようとしている(J. Miller、私信)。あまねく受け入れられている水質基準がないので、各研究施設はそのプロトコールの条件に従って必要な水質を決めなければならない。究極的には、研究施設のスタッフはそれらが所内の基準にあっていることを示すために試験をして文書化を行わなければならないだろう。

飲用に適した水とは何か?

合衆国の多くの地域で基準コードとなりつつある The International Plumbing Code(国際水道管コード)(E. Vittitow、私信)は“飲用に適した水とは病気あるいは有害な生理学的効果を起こすだけの量の不純物を含まない水であり、Public Health Service Drinking Water Standards(公衆衛生局飲料水基準)の細菌学的および化学的品質基準または管轄する公衆衛生当局の諸基準に適合した水のことである”と述べている。

合衆国では、Environmental Protection Agency(環境保護局) (EPA)は水道水の水質許容範囲を決める基準を監督している。EPAはNational Primary Drinking Water Regulations(全国一次飲料水基準)に責任を持っている。この基準は飲料水に含まれる規制物質について最大汚染物濃度(MCLs)を定める健康関連の基準である。MCLは消費者の蛇口に配水される水に含まれる汚染物の最大許容濃度である。MCLはSafe Drinking Water Act(安全飲料水法)の下にある公共水道に強制される。EPAは最大汚染物濃度目標(MCLGs)も定めている。この濃度では人の健康に対する既知または予測される害作用が起きない、適当な安全域を認めるものである。MCLは公共水道が使えるコスト、処理技術を考慮に入れて、妥当なものとしてMCLGに近く定められている。

実験動物施設にとってとくに興味深いのは飲料水中の大腸菌群のEPAの上限数である。なぜならば、大腸菌群が存在することはその水が動物の排泄物で汚染されていることを強く示しているからである。5%だけのサンプルが1ヶ月に総大腸菌数陽性であってもよい。テストで大腸菌群陽性となったサンプルはEscherichia coliについて再検査しなければならない。もしE. coliが存在すれば、その水はもはや飲用適とは見なされない。

これらの定義は理解することが重要である。なぜならそれらが地方自治体が動物施設に配水している水質を規制しているからである。そのような濃度は実験動物の健康を維持するのに適切かもしれないし適切でないかもしれない、また研究の妥当性を保護するかもしれないししないかもしれない。施設管理者および獣医師はどの汚染物を測定すべきか、それらをどのような頻度で測定すべきか、そしてそれぞれについて許容限界はどれだけかを決定しなければならない。

Edstrom Industries (Waterford, WI)、実験動物用給水装置の販売会社、は実験動物飲料水質管理プログラムを作成するときには以下のことを推奨する。

EPA基準に合致すること。“飲用に適して、汚染されていない”水をEPAのヒトの飲用のためのPrimary (健康関連の)Drinking Water Standardsに合致しているものと解釈することが意味をなす。

貴施設の研究試験にとって関心のある汚染物に上限をセットしてテストすること。たとえば、毒性試験では、飲料水中のすべての干渉化学汚染物をテストすることが意味をなす;免疫無防備状態の動物では、細菌汚染に厳しい上限を考えることが思慮深いことである。

基準として他の施設と組織を用いること。あなたの水質基準を近所の動物施設の基準と比較すること。というのは、近所の動物施設も類似の水源を扱っていると思われるからである。

純水が規定されている場合には水浄化プロセスをモニターすること。水浄化は、通常逆浸透によるが、水から汚染物を除去し、標準化した水質にして、地方の水道水における季節変動に対して保護する。伝導度あるいはpercentage rejectionをテストすることによって水浄化プロセスをモニターすること。

水の浄化と処理の方法

どの場所にあるかによって、水は井戸、貯水池、あるいは市営水道などいろいろな水源から得られる。水源は季節によって年の時期が異なると変化する。市営水道からくる水は、品質レポートが公表されており、市営水道局のホームページで閲覧することができる。しかし、そこに掲げられている情報は特定の瞬間をとらえたいわばスナップショットにすぎず、蛇口にある現在の水質を保証するものではない。

実験動物施設でまず取るべきアクションは入ってくる水を施設自身の基準に照らしてテストすることである。年内の汚染物の変動を評価することは、どのような水浄化システムを使うかを決定するのに役立つ。入ってくる水の水質にはある程度のバラツキがあるので、施設管理者は動物実験施設に供給される水が汚染されていると仮定するのが賢明である。それゆえに、水質管理プログラムで取るべき第一歩は水の浄化プロセスを用いることである。

水の浄化プロセス
粒子フィルター:これらのフィルターは一般的に5 μmから 0.2 μmまでの幅があり、水によって運ばれる汚染物に対して健康を守る防御壁として装備される。しかし、フィルターのカートリッジを定期的にチェックして交換しないと、汚染物は溶解しているときよりも多くの問題を起こすことがある。なぜならばフィルターは細菌のための栄養物を捕捉し、細菌はフィルターを“通って発育し”配水システムの中に入り込むからである。フィルターは飲水バルブの機能を損なうような大きな粒子を除去するという価値を持っており、実験動物の飲水装置のための最小限の防護であると考えるべきである。

活性炭素フィルター:活性炭素フィルターは有機物を水から吸着し、実験動物の給水装置においてはRO浄化プロセスの前処理として塩素と有機物を除去することができる。これらの化学物質は有害なトリハロメタン(THMs)様クロロフォルムを形成する。THM汚染に関心があるために、実験動物施設は残留消毒としてRO水に塩素を添加しようとするときには活性炭素を使用することがある。活性炭素が吸着する有機物は細菌にとって優れた栄養の供給源となるので、活性炭素フィルターは慎重に維持しなければならない。さらに、活性炭素の有効性はそのメディアが吸着限界に近づいていくので時間とともに減少する。

紫外線(UV)灯:紫外線灯、とくに波長254 nmに長く暴露すると、汚染細菌が活性を失う。しかし、UV灯は不活性化した細菌を除去しないので下流に送られるパイロジェン負荷を増大させる。UVは溶解イオンや有機物も除去しない。さらに、UV灯はユニットに入る微生物の90%しか殺さない。これらの欠点のため、実験動物施設はUV灯を唯一の浄化法として採用することはないが、より大きな浄化プロトコールの一部として有用であると認めている。UV灯は定期的な電球の交換など定期的なメンテナンスを必要とする。また、電球は水のところまで邪魔されない光線をとどかすために定期的なクリーニングを必要とする。

逆浸透(RO):逆浸透は水に圧力をかけて半透膜を通過させ、原子の半径ほどに小さい汚染物も濾過する浄化プロセスである(Table 1参照)。多くの水浄化フィルターと同じように、RO膜も高密度の栄養物を細菌のために集め、そして、適切なメンテナンスを行わなければ、細菌がRO膜の中で発育し下流の水を汚染する。現代のRO装置は多くの自動モニタリングおよび自動クリーニングプロセスを取り入れているが、RO膜はなおも2-5年ごとに交換する必要がある。

Table 1. 逆浸透によって除去される汚染物

汚染物 ROによる除去率
溶解イオン >93%
有機物 99% >200 MWa
粒子 >99%
細菌 >99%
パイロジェン >99%
aMW、分子量。分子量の遮断率は膜のポア・サイズに基づく(Edstrom Industries, Inc.)。

細菌の処理

水の中のすべての汚染物の中で、細菌が最もコントロールしにくいものである。RO水の入った配水システムは細菌にとって低栄養で敵対的な環境であると思われが、実際には細菌は配管表面に付着しバイオフィルムを形成することによって住みつき配管内に非常にうまくコロニーを作っている。実際に、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)のような細菌は、飢餓モードに入り、栄養の少ない水の中で全く容易に生存することができる。

菌数計算
バイオフィルムが配管システムの内部表面積の大部分をカバーできるので、バイオフィルム内の細菌数を計算する決定的な方法がない。しかし、バイオフィルムとして表面に付着している細菌の数と水の中に自由に浮遊している細菌の数との間には相関のあることを理解することが重要である。実験動物施設は実験動物がその水を飲むときに動物が水中浮遊細菌に暴露されるから、水中浮遊細菌に関心がある。しかし、バイオフィルムは、水中に存在する大多数の水中浮遊細菌はバイオフィルムから剥離してきたから重要なのである。バイオフィルムの剥離は不規則な間隔で起きる結果、細菌数にバラツキが生じる:このようにサンプル中の細菌数は少ないのに動物が高い細菌数に暴露される危険性がある。さらに、従属栄養細菌数の測定に用いられる平板寒天培地は、低栄養モードにある細菌を培養できないことがある。

標準従属栄養平板寒天培地の代わりはR2Aである。これは高純度の水サンプルを培養するために開発された低栄養培地である。典型的な高純度水の給水システムにみられる栄養濃度を正確に表現したものである。したがって、そのようなサンプル中の細菌は発育し、より正確な細菌数が得られる。ROを取り入れているような高純度の水の給水システムに投資するほど水質に関心の高い施設はR2A培地を使用することによって得られるような水質試験の正確さを必要とするであろう。施設が水道水を使っていて非常に正確な菌数に関心がないならば、総菌数で十分である。

細菌数の制御
細菌はいつでも配管表面のバイオフィルムから剥離できるので、水中には塩素のような残留消毒薬を維持しておくことが重要である。有効遊離塩素が水中にあるとき、その塩素は剥離した細菌を動物が飲む前に殺すことができる。

処理プロセス
水の浄化につづいて、水は配管システムの中の細菌数を制御するための処理プロセスを通過する。多くの動物施設は塩素あるいは酸のような残留消毒薬を用いているが、その他の施設では“化学物資を含まない”水質ポリシーの一部としてUV灯を用いている。残留消毒薬を維持することと、化学物資を含まない方法を実行することの間のトレードオフは化学物質を含まない水の中の細菌数のバラツキが拡大することである。なぜならば、バイオフィルムの発育を抑制するあるいはバイオフィルから剥離した細菌を殺す残留は得られないからである。

消毒 対 残留消毒薬
過去25年間、実験動物施設は実験動物の給水システムの中の細菌と戦うためにいろいろな戦略を用いてきた。この間に、実験動物施設は定期的な高濃度塩素消毒に頼ってきた。これは30 ppmまでの塩素濃度で20-30分集中的に“浸漬”し、それから塩素を含まない水でフラッシングすることであった。

細菌に関するわれわれの新しい理解では、消毒は短期的には有効であるけれども、消毒後わずか3日で給水システム内で再びコロニーを作ることができることがわかった。 実験動物の給水システムの中における細菌を制御する新しいモデルはインストール時あるいは不使用期間の後にシステムを消毒し、その後は細菌が再発育を始めるあるいは生き残ったバイオフィルムから剥離してくるときに細菌を殺すために残留消毒薬を維持することである。

残留消毒薬
塩素は多くの実験動物給水システムに添加される残留消毒薬である。2-3 ppmの濃度が細菌数を低く維持するために有効である。pHを2.6と3.0の間に維持するためにHClを用いる動物用飲料水の酸性化が、低いpHの水は給水ボトルの細菌の繁殖を抑えるので長く行われてきた。pHが2.5以下に落とさないことが重要である。なぜならば、これは給水システム内のステンレス・スチールおよびシリコン・ゴム部品を劣化させるからである。また、溶解塩素ガスがpH 5.0以下に酸性化した塩素添加水に発生し、Edstrom Industries, Inc.の経験によれば、実験動物の飲水バルブの中のシリコン・ゴムの膨潤を起こす。

デッドレッグをなくす

どの給水システムにも応用できる1つの必須原則はデッドレッグをなくすことである。AAALAC Internationalの査察官が問題を発見する動物の飲水システムに関する最も一般的なエリアはデッドレッグと給水ビン・ノズルの消毒である(J. Miller.私信)。

現代のシステム・デザイナーはデッドレッグをなくすことに注意を払っている、しかし、デッドレッグはラックのマニホールド・レベルでも起きる;定期的なフラッシングをされていないラックは必ずデッドレッグになる。配管ラインをマニホールドに接続するリコイル・ホース(しばしば“ブタのしっぽ”と呼ばれる)もデッドレッグになる。ラックをシステムからはずすとき、リコイルホースをはずして消毒するか、または自動オンライン・ラック・フラッシングを用いるフラッシュライン・リコイルホースに接続することが必須である。

給水システムの建築

3つの基本的な配管システムがあり、それぞれにいくつかのバリエーションがある。多くの現代のシステムは316ステンレススチール部品を使っているが、塩化ポリビニール(PVC)を使っているものもある。

静圧
静圧システムは動物が飲む量以上の水の移動がない。ライン端末のバルブは通常、ラインの定期的な手動フラッシングができるようにインストールされる。静圧システムが高質の水を確実に供給できるとは期待できない。なぜなら細菌が急速に発育するからである。唯一の例外はデーリーベースで手動フラッシングをコンスタントに行っている施設であるが、これは小さなシステムでのみ実行可能である。

再循環
再循環システムは水を小さなタンクに貯めて、持続的に水に圧力をかけてタンクに戻ってくる配管ループを通している。概念的には、このデザインは常に水を動かしているので静圧システムよりはベターである。再循環システムは細菌を制御するためにUV灯消毒を採用することが多い。あいにく、UV灯は約90%の細菌しか殺さないので、細菌を下流に付着させてバイオフィルムを形成させる。時間とともに、バイオフィルムの剥離が起こり、水中浮遊細菌をシステムの中に送って動物が摂取することになる。剥離した細菌の塊は不透明で、再循環ループ内のUVに対する暴露にも生き残ることができる。

新しい再循環システムは非常に複雑で、各ラックのマニホールドの中の水を再循環させることもできる。これらのシステムの流れをバランスさせるデザインに注意を払わなければならない。なぜなら、ラックをはずすことと長い再循環ループは流速を落とすからである。

フラッシング・システム
フラッシング・システムはマニホールドの終点に電子ソレノイドバルブを持ち、コンピュータ・システムがすべての配管ラインとラック・マニホールドを定期的にフラッシングするようにする。塩素のような残留消毒薬と組み合わせるとき、フラッシングは確実に水を完全に交換し、塩素をすべての配管とマニホールドに送り、消毒薬が確実にバイオフィルムから剥離した細菌を殺す。

ボトル充填機の中の水質

現代のボトル充填機は正しく操作すれば高質の水を供給できる。ボトル充填マニホールドはボトル充填サイクルが動くたびにフラッシングされるので、水の回転が良く、残留消毒薬(塩素または酸)が細菌と戦うことができると期待してよい。しかし、残留消毒薬の入らない水を供給している施設はボトルに入る細菌のレベルはバイオフィルムの剥離が起きたときに変動することを知っておかなければならない。

ボトル充填機を1日以上使わないならば、オペレーターはボトルの充填を始める前に浄化サイクルを用いなければならない。これによってマニホールドからすべての水がフラッシュアウトされ、ボトルが水中浮遊細菌によって汚染される機会が減る。残留消毒薬を使っていなければ、オペレーターはボトルの中の細菌数のバラツキが大きくなり総菌数が増えると考えなければならない。

結論

システムの設計とメンテナンスの両方が給水システムの質に影響する。しかし、浄化および処理の装置よりも水質の結果に焦点を当てなければならない。したがって、細菌とバイオフィルムについて、それらが低栄養環境にどのように生き残るか、そしてそれらをどのようにしたら制御できるかを十分に理解することが大切である。その知識を持って、各施設はその個々のニーズと特殊な問題に適した装置を採用することができる。


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